「給料は下がる?上がる?地方建設会社への転職と『可処分所得』のリアルな話」  

土木施工管理の仕事をしていて、ふと転職を考えたとき、やっぱり一番気になるのって、お給料のことですよね。特に、都会から地元へUターンしたり、自然の多い場所での暮らしを考えたりして、地方の会社に転職するとなると、「今の給料より、やっぱり下がっちゃうのかな…」なんて不安が、真っ先に頭をよぎるんじゃないでしょうか。


今の生活もあるし、家族がいればなおさら、収入のことはシビアに考えないといけません。その気持ち、すごくよく分かります。でも、ちょっと待ってください。本当に大切なのは、求人票に書いてある「額面の数字」だけなんでしょうか。


実は、お金の考え方や、豊かさの物差しを少しだけ変えてみると、地方で働くことの価値がまったく違って見えてくるかもしれません。


この記事では、そんな転職とお金のリアルな関係について、一緒にじっくりと考えていきたいと思います。これを読み終わる頃には、あなたのモヤモヤした不安が、少しでも晴れてくれたら嬉しいです。


なぜ「地方は給料が安い」って思われがちなんだろう?


まず、このイメージから話を始めましょう。正直に言うと、求人サイトでパッと見たときの給与額は、やっぱり東京や大阪といった大都市圏のほうが高く設定されていることが多いです。これは事実だと思います。


じゃあ、なんでそうなるんでしょうか。理由はいくつか考えられます。


一つは、物価や家賃の違いです。都会はとにかく生活にお金がかかります。アパートの家賃も、ランチ代も、何もかもが高いですよね。だから、企業側もそれに見合った給与水準にしないと、そもそも人が集まってくれない、という事情があります。


もう一つは、工事の規模や単価の違いです。もちろん地方にも大きなプロジェクトはたくさんありますが、全体的に見ると、大都市圏のほうが超高層ビルや大規模なインフラ開発など、一件あたりの動くお金が大きい工事が多い傾向にあります。それが社員のお給料に反映される、という側面もあるでしょう。


こんな理由から、「地方=給料が安い」というイメージが生まれるのは、ある意味、仕方のないことかもしれません。


でも、ここからが本題です。その額面の数字だけで、「やっぱり都会のほうがいいや」と判断してしまうのは、もったいないかもしれませんよ。


本当に注目すべきは「手元に残るお金」と「自分の時間」

ここで、少しだけお金の考え方を変えてみましょう。大切なのは、お給料の総額、つまり「額面」ではなく、そこから税金や社会保険料が引かれた「手取り」、さらに、家賃や光熱費などの必要経費を差し引いて、本当にあなたが自由に使える「可処分所得」です。


ちょっと具体的な例で考えてみませんか?


都会で働くAさんと、地方で働くBさんを比べてみましょう。


都会のAさん

額面年収:600万円

月の手取り:約38万円

家賃(駐車場代込み):15万円

手元に残るお金:23万円


地方のBさん

額面年収:500万円

月の手取り:約32万円

家賃(駐車場代込み):7万円

手元に残るお金:25万円


どうでしょうか。額面の年収ではAさんのほうが100万円も高いのに、毎月自由に使えるお金は、なんとBさんのほうが多い、なんていう逆転現象が起こる可能性があるんです。これはあくまで簡単なシミュレーションですが、地方の家賃の安さは、生活に絶大なインパクトを与えます。


さらに、お金には換算できない、もっと大切なものがあります。それは「時間」です。


Aさんの通勤時間は、満員電車に揺られて片道1時間半。往復で3時間です。

一方、Bさんの通勤時間は、車でスイスイと片道20分。往復で40分。


その差は、1日あたり2時間20分。1ヶ月(20日勤務)で計算すると、約47時間。なんと、丸2日分近い時間を、Bさんは自由に使えるわけです。


この浮いた時間で、あなたなら何をしますか?

早く家に帰って、家族とゆっくり夕ご飯を食べる。

子どもと一緒にお風呂に入って、今日の出来事を聞いてあげる。

趣味の釣りのために、平日の夜から道具の準備をする。

週末は、少し足を延ばしてキャンプに出かける。


都会の暮らしでは諦めていたような、ゆとりのある毎日が、すぐそこにあるかもしれません。お金の額面だけでは測れない「生活の質」という豊かさが、地方には確実に存在しています。


あなたの給料はどうやって決まるの?「経験」と「資格」の本当の価値

さて、暮らしの話も大切ですが、やっぱり自分のスキルがどう評価されるのか、気になりますよね。安心してください。あなたがこれまで積み重ねてきた経験と、努力して取った資格は、あなたが思っている以上に大きな価値を持っています。それは、地方の会社であっても、まったく変わりません。むしろ、地方だからこそ、あなたの力がもっと輝く場面がたくさんあるんです。


まずは「経験」の価値について。

あなたがこれまでに関わってきた工事の種類(道路、河川、橋、トンネルなど)、現場の規模、そして、どんな立場で仕事をしてきたか(現場代理人、主任技術者など)は、転職市場において、あなたの価値を決める最も大きな要素です。


特に、地方の建設会社は、少数精鋭で幅広い工事に対応していることが多いです。だからこそ、「この工事なら、あの人に任せられる」という即戦力は、喉から手が出るほど欲しい人材なんです。あなたが「当たり前」だと思っている経験も、新しい会社にとっては「ぜひ、うちで活かしてほしい!」と願う貴重なスキルなんですよ。


次に「資格」の価値。これがまた、すごく重要なんです。

ご存知の通り、公共工事の入札に参加するには、会社の技術力を示す「経営事項審査(経審)」という評価がとても大切になります。そして、この経審の点数を大きく左右するのが、会社に所属している「1級・2級土木施工管理技士」の数なんです。


つまり、有資格者であるあなたが会社にいるだけで、会社はより大きな、より有利な条件で工事を受注できる可能性が高まるわけです。あなたは、ただの社員ではなく、会社の受注能力を底上げする「歩く武器」のような存在とも言えます。


だから、会社は資格を持っている人を優遇します。資格手当が出るのは、まさにこのためです。手当の額は会社によって様々ですが、あなたの資格が会社にもたらす利益を考えれば、それがきちんと評価されるのは当然のことと言えるでしょう。


これから1級を目指そうと考えている方も、その意欲は必ず評価されます。入社後の資格取得を全面的にバックアップしてくれる会社も多いので、面接のときなどに積極的に確認してみるのがおすすめです。


後悔しない転職のために。会社を見極める3つのポイント


ここまで読んで、少し地方への転職に前向きな気持ちになってきたかもしれません。最後に、実際に転職活動をするときに、後悔しないためにチェックしておきたいポイントをいくつかお伝えします。


1.給与の内訳をきちんと確認しよう

求人票に書かれている月給の内訳は、しっかり確認しましょう。基本給はいくらで、固定残業代(みなし残業代)は含まれているのか、含まれているなら何時間分なのか。また、資格手当、役職手当、家族手当、住宅手当といった各種手当がどうなっているのかも重要です。面接の場で聞きにくいと感じるかもしれませんが、これはあなたの生活に直結する大切なこと。誠実な会社であれば、きちんと説明してくれます。


2.長く働ける環境か見極めよう

賞与(ボーナス)は昨年実績で何ヶ月分出ているのか、昇給は年に何回、どのような評価で行われるのか。そして、退職金制度はあるのか。こうした点は、長く腰を据えて働く上では欠かせない要素です。会社の安定性を見る上では、どんな工事を主に手がけているか(公共工事が多い会社は比較的安定しています)や、施工実績などをウェブサイトで確認するのもいいでしょう。


3.「人」や「雰囲気」を感じてみよう

最後の決め手は、やっぱり「人」だと思います。面接官の対応や、社内のすれ違う人たちの挨拶や表情などから、その会社の雰囲気を感じ取ってみてください。もし可能であれば、実際に働くことになるかもしれない現場を見学させてもらうのも一つの手です。あなたが気持ちよく、前向きに働ける場所かどうか。あなたの直感を信じることも、時には大切です。


まとめ


転職、とくに地方への転職を考えたとき、年収という数字は確かに大きな壁のように感じられるかもしれません。でも、今日お話ししてきたように、豊かさの物差しは一つではありません。


額面の数字に一喜一憂するのではなく、手元に残り、自由に使えるお金はいくらになるのか。そして、お金には換えられない、自分や家族のための大切な時間はどれだけ増えるのか。そんな新しい視点で、あなたのキャリアとライフプランを見つめ直してみてはいかがでしょうか。


あなたがこれまで汗水流して得てきた現場での経験と、机にかじりついて勉強した資格は、決してあなたを裏切りません。その価値は、場所が変わっても普遍的なものです。いや、もしかしたら、あなたという力を本当に必要としている、地域に根ざした会社でこそ、その価値は最大限に輝くのかもしれません。


ぜひ一度、あなたの地元や、興味のある地方の企業の求人情報を、今日お話ししたような新しい物差しを持って、もう一度眺めてみてください。きっと、今までとはまったく違う、ワクワクするような発見があなたを待っているはずです。